ブラジル、G7の緊急支援を拒否か アマゾン火災

アマゾン火災消火で協力 日ブラジル外相が電話

河野太郎外相は26日、ブラジルのアラウージョ外相と電話し、南米の熱帯雨林アマゾンの火災をめぐり協議した。「消火のためにできることを検討したい」と表明した。中長期的な森林保全対策での連携も申し合わせた。

菅義偉官房長官も記者会見で「状況を懸念している。消化に向けて必要な支援をしていきたい」と述べた。フランスで開催中の主要7カ国(G7)の首脳会議(ビアリッツ・サミット)でも議題となり、支援策を話し合った。

ブラジル、アマゾン森林火災の援助拒否 仏に反発

ブラジル有力紙グロボ電子版は26日、アマゾン地域の森林火災の消火活動を巡り、主要7カ国首脳会議(G7サミット)が拠出で合意した緊急支援2千万ドル(約21億円)について、右翼ボルソナロ政権が受け取りを拒否する方針を決めたと報じた。

ブラジルのアマゾンの火災現場で働く消防士(26日)=AP

ブラジルのアマゾンの火災現場で働く消防士(26日)=AP

世界最大の熱帯雨林の火災に対して後ろ向きな対応に、ブラジル政府に対する国際社会の一層の批判が高まるのは必至だ。

アマゾン保護に消極的なボルソナロ大統領と、地球温暖化対策を声高に叫ぶG7議長国フランスのマクロン大統領は最近、森林火災への対応を巡り非難の応酬を繰り広げてきた。

ボルソナロ氏は26日、ツイッターで「マクロン氏によるアマゾンを『救う』ためのG7による『同盟』には、われわれを植民地のように扱おうとする意図が隠されている」と批判していた。

 

アマゾン熱帯雨林で続く森林火災に対する抗議が世界中から殺到する中で、深刻化する環境危機がブラジル経済に打撃を及ぼしかねないといった不安の声が同国の主要企業や業界団体の間で高まっている。

 

世界最大の熱帯雨林アマゾン一帯で猛威を振るう火災は乾期に自然発生した火種が主因だが、農場経営者が放牧地や畑を開拓するために違法に森林を焼いたことが原因だとする見方もある。2018年に当選したボルソナロ大統領が経済振興のためにアマゾン開発を提唱して以降、野焼きにはずみがついたと専門家はみる。

ボルソナロ氏は当初、NGO(非政府組織)がブラジル政府のイメージダウンを狙ってアマゾンで放火したと批判し、ブラジルの火災対応が温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」を「欺いている」と非難するフランスのマクロン大統領にも反論してみせた。その後、国際的な批判が高まると、被災地域の地方政府に緊急対策を取るよう命じ、消火活動のために軍を派遣した。

■国内企業からも不満噴出

ところが、一連の対策を講じた後も世界中の抗議は収まらず、ブラジル製品の不買運動を懸念する国内企業からも批判や不満が噴出した。

「民間企業にとっては間違いなく頭の痛い問題だ」とブラジル国際商工会議所の政策責任者、ガブリエラ・ドリアック氏は認める。「民間には(温暖化など持続可能性の問題に)貢献している善良な人が多いが、もはや不言実行というわけにもいかない。民間も相応に努力し、継続的に活動していることをアピールしたい」

大規模農業法人をはじめブラジル企業の多くは、過疎地で監視の目も届きにくいアマゾン一帯で暗躍する違法・悪徳業者のせいで、そうでない企業の信用まで傷つけられていると感じている。さらに、このまま森林破壊が続けば、ブラジルの農産物は環境保護に熱心な海外企業に背を向けられて競争力を失い、不買運動も起きかねないといった懸念も強まっている。

マクロン氏など欧州各国首脳は、ブラジルがアマゾン火災の鎮火に真剣な取り組まない限り、欧州連合EU)と南米南部共同市場(メルコスル)が6月に合意した自由貿易協定(FTA)を批准しないと警告する。

ブラジルの証券会社XPインベストメンツのチーフエコノミスト、ゼイナ・ラティフ氏は「農業法人の経営者は気をもんでいる。地球環境が厳しさを増す中で、他国のライバルはブラジルを攻撃する材料として今回の問題を利用するだろう」と予測する。

■ブラジル産品のボイコットは「時間の問題」

EUの議長国を務めるフィンランドが23日、ブラジル産牛肉の輸入禁止を検討するよう加盟国に呼びかけたことで、こうした懸念はさらに強まった。ブラジル・アグリビジネス協会のマルセロ・ブリット会長は、ブラジル産品がボイコットされるのは「もはや時間の問題」だと地元経済紙ヴァロールに語った。

「ブラジルが世界で唯一の生産者で、他国では供給できない品目があるなどというばかげた考えは捨てなければならない」とブリット氏は語り、「今後重視すべきなのは、自分たちが作りたい産品ではなく、市場が求めるものを生産することだ」と強調した。

この発言の直前には、ブラジルの大豆生産者団体がアマゾンでの違法伐採や「犯罪的火災」を非難した。

違法伐採の批判にさらされているのは主に生産性の低い畜産農家だ。大豆農家も古くから違法伐採に関与してきたが、2006年に森林伐採地域で栽培された大豆の購入が国際的に禁止され、状況は改善した。

ブラジルのクリスチーナ農務大臣は23日、アマゾン森林火災への政府の対応を擁護し、ブラジルが世界の懸念に配慮していないわけではないと述べた。「今こそ我が国が消防を担う時だ。温度を下げる必要がある。アマゾンの重要性はブラジルも認識しており、我々がアマゾンを保全する」

一方、現在の難局はボルソナロ大統領の攻撃的な言動により悪化したと考えるブラジル人も多い。同氏は被災地を元気づける言葉をかけることもなく、自身を批判する人々への攻撃にばかり熱中していた。

「大統領の発言は重い。だからこそ(ボルソナロ氏の無責任な)言葉のせいで状況は悪化した」と前農務大臣で、穀物大手アマッジ社の創業家を率いるブライロ・マッジ氏は批判する。「ブラジル産農産物が各国からボイコットされないか心配だ。我が国は孤島ではなく、他国とつながっている。だから世界がどう動くのか注視していく必要がある」